胆沢のさよ姫史跡探訪(4)大蛇編

大蛇(高山掃部長者の妻)

長者の妻が強欲のあまり姿を変えた大蛇。止々井(とどい)の沼に棲みつき、年に1人、年頃の娘を生贄として村人に要求するようになります。

南部神楽ではこの妻は三沢御前と名付けられています。
長者の妻が人間の姿をしていた頃の強欲さについてですが物語の話者ごとに改変や付け足しが多く、かつ語られる描写がみょーに卑近に感じられるところでした。芸能者の語り(高山掃部長者・さよ姫の物語は奥浄瑠璃という芸能によって語られたのだそうです)を聞いた聴衆がそれぞれの家に持ち帰って家人に語り聞かせるとき、身近なところで見聞きした強欲婆さんの振る舞いが尾鰭として付け加えられたとか、そういうのがあったんじゃないですかね^_^)

(例)
・下人の寝所は長い丸太を枕にさせ、夜が明けると丸太の端を木槌でコンコンと叩いて起こす。
・米や栗をつく時は臼の真上に藁を置き、下ろす杵で米を、上げる杵で藁を打たせる。
・雨の日も自ら考案した藁みの(すごいじゃんね)を下人に着せてこき使う
・正月や盆をことのほか嫌い一日の休みは丸一年の損。働け!働け!!
・菓子くだものを貰っても人に喰わせず己も食わず、仕舞い込んで黴を生じ腐らかし結局捨てる。犬も食わない烏も食わない。

途中省略してさよ姫が生贄となるその日、大蛇が遅い!生贄はまだか!と怒る様子を見てみましょう。

『然るところに身御供(みごく)遅しと大蛇は怒りをなし、池の底より大音声上げて喚(よば)はるやう、やあいかに胆沢の者どもたしかに聞け、例年身御供を備ふる刻限は辰巳の間を過ごさぬに、いまだ身御供を上げざるはいかなる事ぞ、もし滞るものならば瞬く内に上下胆沢をゆり崩し、五十七郷を泥の湖(うみ)となさん事、さけぶ声山に響き谷にこたえて恐ろしき事、ものにたとえんやうもなし』

恐れおののいた村人たちは郡司兵衛義実(くじ引きで娘を生贄に差し出す番に当たった人)の屋敷に押しかけ、お前の妻でも娘でもいいから早く差し出せと騒ぎます。義実も焦りますがさよ姫と世話をする女たちは涙・涙で…という場面。ここ、大蛇は水害による災いをなす存在として描写されているように思われます。


本題の史跡探しです。大蛇が棲みついたという止々井の沼とは。

止止井神社跡(奥州市胆沢南都田清水下)

国道397号沿いです。これ自体はさよ姫関連の史跡でなくここに止止井神社があったことを今に伝えるものです。止止井という地名の痕跡。四ツ柱(伊勢神社)から600mほどのところですね。実際に行ってみてこの辺を大蛇の棲家としていけにえの祭壇が置かれた四ツ柱までの距離感としては、まぁ、十分あり得る(`・ω・´)
『止々井(とどい)』→この辺の旧村名としては『都鳥(とどり)』で、現在の南都田という地名は"南"幅下・"都"鳥・柳"田"の旧村名から一文字ずつ取ったそうです。

この付近にあったという沼地

そして。調べ漁っていくうちにかつてこの一帯は大小の沼地が点在していた地域という文献に出くわすようになります。さよ姫の道行きも化粧坂から四ツ柱に向かう場面は舟に乗っていたりします。

出典:広報おうしゅうvol.156(平成31年2月号)『奥州遺産-ときを越え受けるがれるもの-第101回 さよ姫伝説を旅する(後)』より。『止々井沼の推定地』という着色部分に注目。


仙台藩の地誌として最初の方に編纂された奥羽観蹟聞老志の胆沢郡の項目には高山掃部長者・さよ姫に関連する地名とエピソードが数箇所記載されており、その中に蝮蛇湖という記述がありました。にしても、蝮蛇湖とはおどろおどろしい名前です^_^)

都鳥ふれあいパーク(奥州市胆沢南都田上広岡)

化粧坂~四ツ柱周辺を走っていたときたまたま通りかかって見つけた、耕作地の基盤整備事業が完了したことを記念する石碑と広場・池。農業用のため池というほどのスケールではないかな。周辺は整備され大規模化された農地とタテヨコ真っすぐな道が広がっております。こちらもさよ姫の関連史跡などと明示があるわけでなく、都鳥という地名に大小多くの沼があったことの痕跡のように筆者が思えた場所という話になります。
位置関係としては宝寿寺の垢取り石より北、四ツ柱よりは南の位置にあります。沼地のスケールが想像していたより一気に広がりました。

参考文献

・祭りの追っかけ『うぐいす沢神楽  高山掃部長者 @第40回胆江神楽大会』

・胆沢町史Ⅺ民俗編4 より松浦佐用姫(胆沢物語)と高山掃部(長者物語)

・奥浄瑠璃集[続]翻刻と解題と論考より松浦佐世姫物語

・くぐる鳥居は鬼ばかり 止止井神社跡 (胆沢南都田)

・広報おうしゅうより

vol.155(平成31年1月号)より『奥州遺産-ときを越え受けるがれるもの-第100回 さよ姫伝説を旅する(前)』

vol.156(平成31年2月号)より『奥州遺産-ときを越え受けるがれるもの-第101回 さよ姫伝説を旅する(後)』

・義経伝説サイト内 奥羽観蹟聞老志巻之十③胆沢郡

Posted by hiyu-rin